スポーツの秋



本日のの任務。
それはこの迷える子羊たち…いや、困惑しきりのソルジャーたちを無事ゴールまで導くこと。

先ほどルーファウスから手渡された紙を片手に第一演習場のゲートをくぐった。



「ん?」


呼ばれて振り返ると、所在なげに立つ金髪碧眼ツンツン頭の姿。


「おはよ、クラウド。どうしたの?」
「イヤ、今から何が起こるのかな、と思って」
「さあ、あたしにもよく分からないわね」
「ま、気にしてもしゃーねーって」
「ザックス…」


人の波をかいくぐってここまで来たらしいザックスが、豪快にクラウドの肩を叩く。


「で、最初のテストはなんなんだ?」
「えーと…最初は基礎体力測定だって」
「基礎体力測定?」
「うん、思ったよりまともそうな種目ね。コレなら…」


ほっとしたのも束の間。


「うおおおお!」


野太い悲鳴が方々で聞こえ始め、はぎょっとして辺りを見回した。


「わーーー!」


キングベヒーモス。


「ぐはっ!」


モルボル。


「ひぃぃぃ!!」


マスタートンベリ。


数々の凶悪モンスターがソルジャーたちの後を追いかけ、今や大混乱を極めている。
思わず呆然とその状況を見守っていたが、迫り来るモンスターを蹴飛ばしながら我に返って携帯のボタンを押した。


「私だ」


通話口からワンコールで電話を取ったルーファウスの落ち着き払った声が聞こえる。


「ちょっと、コレは一体なに!?」
「コレとは?」
「モンスターよモ・ン・ス・ター!どこら辺が『基礎体力測定』なのよ!?」
「心外だな。これ以上にないほど的確なセッティングだと思うのだが」


4匹目、5匹目。
会話を続けつつも自分や近くにいるソルジャーを襲おうとしているモンスターたちをしとめている。


「じゃあ、キングベヒーモスはなんになるってのよ?」
「追いかけられ弾き飛ばされるごとに強靭な足腰と耐久力が身につくだろう」
「…モルボルは?」
「ステータス異常に対する免疫力の強化」
「………マスタートンベリ」
「即死に近いダメージを受けることなく戦う方法を模索することで、いかに効果的な戦術を編み出すことができるかどうか」


電話を握る手にじわじわと力のこもるの空気を読むことなく、淡々と続けるルーファウス。


「スキルアップを図る前にみんな病院送りだっつの!」
「そうなる前にゴールへ導くのがお前の仕事だろう?」
「結局のところ、みんなと一緒にしごかれてるのと大差ないじゃない!」
「私は途中の判断はお前に任せるといったはずだが?イヤならどこか安全なところで高みの見物でもすればよかろう」
「そんなことできるか!」
「私はどちらでも構わん」


にやりと笑っているであろうと容易に推測できる、声のテンションには舌打ちした。


「とにかく。今そこに出ているモンスターを殲滅できれば、最初のテストは終了だ。健闘を祈る」
「殲滅って…」


ツーツーツーと無機質な電子音を聞きながら、改めて辺りを見回した。
上手くトンベリからは逃げられているようで、どうやら深刻な被害は見受けられないが。


「わ〜、セフィロスと副社長がコサックダンスしてる〜」


自分がくるくる回りながらはじけるように笑い出すクラウド。
不特定多数を巻き込むモルボルのステータス異常攻撃にはかなりてこずらされているようだ。


「庇いながら一人一人の異常解消しつつやっつけてたんじゃ時間かかりすぎるか」


ぽつりとつぶやいて、は自分の身長ほどある岩に駆け寄り勢いをつけて殴りつける。
粉砕された岩はコブシ大ほどの石となって方々へ飛び散り。


「いててて!」


敵味方の区別なく、クリーンヒットした。


「あぶねーって、!」
「全部避けてるくせに文句言わない!」


嬉々としてモンスター討伐に精を出していたザックスからのブーイングもさらりとかわして、行動を次へと移す。


「ザックス。あなたなら敵だけちゃんと攻撃できるわよね?」
「当然!」
「あたし、治療にまわるからそっちは頼むわよ!」
「おうよ、任せろ」


とザックスの共同戦線から数分後。
ようやく沈静化を見せた第一演習場にて、第一種目『基礎体力測定』が終了した。


2005.09.27