あと少しで日付が変わる、そんなタイミング。
年に一度の節目となるこの日は、こんな時間帯でも人のざわめきが絶えない。
「Jr.?」
そんな中にあって、のんびりと自室で時を過ごしていたは、訪れた人物の姿に目を丸くした。
「どうしたのさ?今時分ならみんなとニューイヤーズ・イブ、楽しんでる最中じゃないの?」
「そのはずだったんだけどな」
「だったら早く行きなよ」
「その『みんな』の中に、なんでお前が含まれてねえんだよ?」
「それはほら、個々人の意志を尊重ってことで」
「却下」
随分とお冠のようで、不機嫌そうな表情を隠そうともしない。
ひらひらと手を振りながら紡いだの言葉を一刀のもとに切り捨てたJr.は、ずかずかと部屋に入り込み、未だ振られ続けている手を掴み取る。
「ちょっと、こら…Jr.!」
突然の展開にしばし唖然とし、次いで半ば引きずられるように立ち上がったが抗議の声を上げるも、さほど効果は得られず。
ズルズルと、なし崩しに部屋の外に出るに至って初めてJr.がその足を止めた。
「年に一度しかねえんだ」
どこをどう取っても強引としか表せない行動に上げかけた抗議の声は、「来年もまた見られるとは限らないだろ」と呟く言葉の前に音にならずにかき消える。
自分たちが置かれた状況は、決して芳しい物ではない。
常に危険と隣り合わせで先への保証など何一つ有りはしないのだ。
「お」
降りた沈黙を打ち消すような歓声に、Jr.が一変して明るい声を上げて。
「。Happy New Year!」
辺り一面に光が満ちあふれた。
「色々ありそうだけど、ま、何とか頑張っていこうぜ」
「そだね」
ライトアップが新年を迎えて一際鮮やかな物になったのだろう。
「おめでとう、Jr.」
いつまでも収束しない光の中。
きっと満面の笑みを浮かべているであろうJr.を思い浮かべながら、連れ行かれるままにも囁くように新年を祝った。
2009.1.1