プラネタリウム



「聞いたぜ。まーた妙なガラクタ手に入れたんだって?」
「ガラクタとは何よ、ガラクタとは」


デュランダル内居住エリアの一室。
すべてのブラインドが下ろされ、夜の闇というよりはまるで一筋の光すら許さない暗室の中にいるようだ。


「星なんざ、航行してるときに飽きるほど見てるだろ」


普通とはおおよそ言い難い雰囲気の中、がさごそと手探りで動き回る物音と、暗がりには不釣り合いな面白がる様子のJr.の声とが不思議な静寂を打ち消した。


「いいじゃない、好きなんだもん」


大方、室内灯を消しに行く手間を惜しんだのだろうが。
真っ暗な室内は彼女の意図を汲むどころかなかなか足を引っ張るばかりだったらしく、諦めたようにはたまたま手に触れたルームランプに明かりをともし。

頼りなげな光に照らし出された、まん丸なフォルムの小さなプラネタリウムにJr.は興味深そうな眼差しを向ける。


「んでも、こういう類の大昔の最先端技術じゃあ得るところは少ないぜ?」
「別に情報の正確性は求めてないって」


一足先にソファを占領していたJr.に少しだけ場所を移動させ並ぶ形で座ったは、「そうじゃなくて」と笑みをこぼすとプラネタリウムに片手を固定させたまま再び室内を暗闇へと戻す。

艶のないメタリックなボディから微細な光が天へと伸びて、散った。


「自由に宇宙を航行できなかった人たちが、空に憧れてこんな投影装置を作っちゃうなんて素敵じゃない?」


本物を模した、小さな小さな空。


「なんて。Jr.なら分かってくれると思ったんだけどなあ」
「だーれが分かんねーなんて言ったよ?」
「…言って、ないね」
「だろ?」


本物ほどの壮大さはなくとも、思いをはせるには十分な代物。


「ねえ、一体どんな人たちがこれを見たのかな」


親子?兄弟?それとも恋人?と。
両目をしっかりと偽りの空へ釘付けたまま。


「さあな。んでも俺たちのカテゴリは間違いなく最後のヤツ、だろ?」
「うわ、何でそうなっちゃうわけ?」
「違うのかよ?」
「ノーコメントってことで」


どこか照れくさそうに、でも嬉しそうにほころんだの横顔をJr.は満足そうに眺めるのだった。