鐘の音



容赦なく露出した肌を刺す冷たい外気。
真っ暗な夜道を照らすのは空一面のささやかな星明かりと点在するたいまつの炎。
パチパチとはぜる火の粉の間を縫うように、人の波が連なり前へと進む。

密やかに、一歩一歩踏みしめるような足取りで。
賑やかに、一歩一歩飛び跳ねるような足取りで。


時が新しい年を刻むまで後如何ほどもなくなった頃。
場に居合わせた者が一様に耳を傾けていると思わせるほど耳に心地よく響く、年に一度の静謐な音。


「なあ
「何だ」


繰り返し、繰り返し。


「今年も色々あったなあ」
「そうだな」


一定の音の群れが生まれては消えていく。


「来年も色々あるのかね」
「ま、ないと考えられるほど楽観的でもあるまい」


ふと、その音を凌駕する勢いで辺りが歓声と新しい年を祝う声に満たされ。


「嬉かないがな」
「同感だ」


示し合わせたわけでもなく、淡々と言葉を交わしていた二人が互いへと向き直る。

一人はくわえていた煙草を片手に収め、一人は穏やかな微笑みを浮かべ。


「いずれにせよ」
「今年もよろしく頼む、ということだな」
「おう」


伝え合ったのはやはり、新年を祝う言葉。


そしてまた一つ、新しい年を迎えた。