「あれ?」
就業時間中、用事で訪れたソルジャーフロア。
おそらく、任務の指示でも求めているのだろう。
エレベーターホール付近で数名のソルジャーたちがひとりの人物を引き留め、何事かを訊ねている様子がの目に飛び込んできた。
「…仕事か」
「うん」
声が聞こえたからか、ちょうどソルジャーたちが散開したからなのかは定かではなかったが。
振り向いたセフィロスはの手元の資料に目を留めると、すぐに興味をなくしたようにそこから視線を外す。
「そんなことよりさ」
「なんだ」
自身の言葉通り、そんなセフィロスの態度を気に留めた様子もないは、何故かしげしげとセフィロスの顔を見つめてふと首を傾げ。
「………久しぶり?」
すぐには返答しづらい間と語尾で、不思議そうに、そう口にした。
「…なんだ、その妙な言い草は」
「いや、だって」
エレベーター前から少し外れた場所へと移動したふたりは、いずれも意味合いの異なった疑問を抱えたまま改めて向かい合う。
「なぜかすっごく久しぶりな感じしたから、なんでかなーって」
「任務でしばらくこっちにはいなかったんだから当然だろう」
最後に見かけたのっていつだっけ、と。
指折り数え始めたを見て、至極当然のことと言い放ちながらもじわりと眉をひそめる。
「…もしかしてお前、気付いていなかったのか?」
「ん?いやいや、えっと…そんなことないよ?」
「嘘をつけ」
確かにわざわざ任務のことを伝えてはいなかった。
とは言え、一週間以上にわたって顔を合わせていなかったにもかかわらず、その認識がなかったとは思わなかったらしい。
「だってさ。アンジールさんはずっといたし」
「1stが揃って出払う任務など、よほどのことがない限りない」
「だよねえ」
見るからに呆れた表情にどこか不機嫌な様子を滲ませて見下ろしてくる目に、誤魔化すようにはへらりと笑い。
「だって。アンジールさんは結構そういうこと教えてくれるけど、セフィロスはぜんぜん教えてくれないし」
仕事が忙しいと顔を合わせないこともあるかなって、思うじゃない?と。
やがて降参したように、ひょいと肩をすくめて見せた。
「…ふん」
「あ!ちょっと」
の言い分に納得したのかしなかったのか。
気がつけば再び集まり始めていたソルジャーたちを一瞥したセフィロスは、特にコメントを返すことなく踵を返し。
「もう」
実は不用意だったらしい一言で、少し機嫌を損ねさせてしまったは、エレベーターの扉が閉まった後もその場に佇んで見送ると、ほどなく諦めたように自分の仕事へと戻っていった。
それからというもの。
「素直じゃないよね、ほんと」
時折送られてくるようになった携帯へのメール。
「いや、ある意味素直なのかな?」
”23日24日は不在”とだけ記された、味も素っ気もない文面に目を落としたは、面白そうに吹き出して自身も文字を操り始める。
「了解っと」
気をつけてね、と。
おそらくもらったメールよりは愛想があるであろう短い文章を送り返したは、セフィロスのメールを眺めてもう一度笑うと、携帯をポケットにしまい込んだ。
2017.4.11