ソルジャーが出向くような任務が途切れているのか。
大勢のソルジャーたちが、身を持て余すかのようにトレーニングに励んでいる中。
「お、いつも感心だな」
「そりゃーお仕事ですし。でも、そう言っていただけると嬉しいです」
どうやらそれは、クラス1stと言えども例外ではなかったようだ。
ソルジャーフロアに足を踏み入れたをめざとく見つけたアンジールが、声をかけると同時に彼女の方へと歩みを進め。
もエレベーターを降りたところで、先に進むのをやめる。
「誰に用事だ?」
「ラザード統括です」
司令室にいらっしゃらなかったので、と。
ブリーフィングルームにチラリと視線を送るに呼応して、アンジールは納得したように頷く。
「任務がいくつか発生したらしいからな。その対応に来てるんだろう」
「真っ先に聞かされていないということは、アンジールさんたちはまだまだのんびりモードなんですね」
「残念ながらな」
会話の間にもフロアを行き来する人影は絶えることがなく。
入り口付近で陣取っているのもいかがなものかと、エレベーター前から自主的に居場所を変えた二人は、奥の多目的スペースが見える場所に落ち着いたようだ。
通路とは異なり、そもそも人が留まり過ごすことを目的としている多目的スペース。
その場所に一段と人影が多いであろうことは当然…のはずが。
「もしかしてあそこ。はた迷惑にも新種のバリアかなにか、張ってます?」
「さあな。なんなら通れるかどうか、君が試してみたらどうだ?」
「謹んで辞退させていただきます」
二人のクラス1stを遠巻きにしながらもソルジャーたちが多分に意識を向けつつ、2mほどの間を置いてぐるりと取り囲んでいる状況に、呆れたような声で呟くにアンジールも冗談で返す。
「…でも」
「うん?」
異様な熱気に包まれている中で、そんなことは意に介した様子もないセフィロスとジェネシス。
「あの人も普段はあんな感じで、割と普通に過ごしてるんですね」
「あんな感じ、とは?」
穏やかに向かい合って、話して、笑っている。
「すごく、楽しそう」
アンジールと相対しているときにもよく見かける姿。
いろんな意味で人間離れしていると脳内にすり込まれている人物のいたって当たり前に過ごす姿に、どうやら本気で驚きを隠せないでいるらしい。
「他人事みたいに言っているが」
「はい?」
興味津々と顔に書いてしみじみと一点を眺めているが気づかない程度の笑みを浮かべたアンジールは、今度は注意を引くように大きく肩をすくめる。
「君と話しているときも、セフィロスは存外楽しそうに見えるぞ?」
「えー?」
自身が投下した言葉に返される反応は、もっとポジティブな物を想定していたのだろう。
しかし、当の彼女の反応と言えば驚きも喜びもなく、100%疑いのまなざしを向け眉をひそめている始末。
「その反応は正直、予想外なんだが…」
「だってあたし、どう考えても適当に遊ばれてるだけですし」
「まあ、確かにそういう傾向があることを否定はしないな」
「でしょう?」
全てを否定するわけではないが、必ずしもそれだけじゃないだろう、と。
声に出してつっこんだところで今のがすんなり聞き入れる可能性は低いわけで。
再びセフィロスの方へと視線を固定したの姿に、アンジールは浮かべていた笑みをじわりと苦笑に変えたのだった。
2016.3.24