SO CRAZY



「ああもう…やだなあ」
「突然何だ」


一人はベッドに横たわりぼんやりと天井を眺め、一人はベッドに足を投げ出して座り手元の本に目を走らせている。
静かな、ただただ穏やかに過ごしているだけのはずだった。


その静寂を打ち破るかのように、おもむろにがごろりと身体を回転させてシーツに顔を埋めた。
いつにない様子を疑問に感じたセフィロスは、怪訝な視線を相手へ送る。


「何でもないよーだ」
「…その態度でか?」
「一点の曇りもなく、これは普通の態度です」
「嘘をつけ」


何事かとあやすように髪を撫でる手は、表情を知ることができないまま払いのけられて宙に浮き行き場を失う。


、一体何を拗ねている」
「拗ねてない!…拗ねてないけど」
「けど?」


語尾だけ返され、はようやく少しだけ顔をセフィロスへと向けると、払いのけたばかりの手を自分の手へと誘う。
まるで戸惑っているような、苛ついているような表情は、やがて窺うようなものへと変わった。


「ちゃんと好き?」
「何がだ」
「セフィロスは、ちゃんとあたしのこと好き?」
「…一体、何の話をしている?」
「答えてよ…」


複雑な色を宿して歪められた顔は、再びシーツへと戻ることはなかったが。
向かい合うセフィロスからは、どうにも要領を得ない言葉に物問う視線だけが返される。

しばらくはごろごろとベッドの上でのたうっていたも、少しは落ち着いたのか。
視線を合わせないまま、重い口を開いた。


「…あたしだけが好きでしょうがないわけじゃない、よね?」


言葉にしないから不安だと。
自分ばかりがのめり込んでいるように思ってしまう、と。
小さく呟く背中に、セフィロスは深いため息を落とす。


…お前。実は馬鹿だろう」
「なんでよ」
「言わないと分からないのだから、馬鹿としか言いようがない」


憤慨して、口をついて出かけた言葉は本人の意志とは関わりなく不意に途切れ。


「…言ってくれたっていいじゃない」
「有言不実行より、不言実行の方がいいだろう?」
「個人的には基本が不言実行で、時々有言実行がベスト」
「わがままな女だ」


かすかな衣擦れの音が聞こえるだけの、静かな空間が戻る。






SO CRAZY.
狂おしいまでにのめり込んでいるのは…?