「あー………おかえり?」
時はクリスマスイブと呼ばれる時間帯。
繁華街は常にない人出でごった返しているであろうタイミングではあるが、家に在ってはなんら関係のない話で。
加えて一緒にいたい人物が仕事で忙しいとなると、いつもと変わらない生活を送るだけ。
な、はずだったのだが。
「…なんだ、その奥歯に物が挟まったような言い草は」
早々に食事と家事を済ませ、特番ばかりのテレビに見切りをつけて読書にでも勤しもうかとしたの前には何故か、仕事で遅くなるはずのセフィロスの姿があった。
「だって今日、任務で遅くなるって言ってたじゃない」
「クリスマスクリスマスとうるさい奴がいるから、さっさと済ませて帰ってきてやったんだろうが」
「うっわ、えらそう」
語尾が疑問系の迎えの言葉はどうやら、ものすごくお気に召さないものだったらしい。
仏頂面のままの口から飛び出す無数の棘が含まれた言葉には小さく苦笑する。
「ね、ご飯は?」
「食ってきた」
帰ってこないと思っていたから準備してないよ?と言えば、当然のように頷きと言葉が返り。
「お出かけする?」
「わけないだろう」
「…だよねえ」
次いでさりげなさを装って仕掛けた問いには、流されることなくこれまた当然のように却下の言葉が返る。
「んじゃ、プレゼントは?」
「用意するヒマ、あったと思うか?」
「えー、ないの?」
「ないな」
「ちぇ」
一応聞いては見たものの、特に期待してはいなかったのか。
風呂入ってくる、と。
脱いだばかりのコートを手渡されたは口調だけ不満げにして見せながらも、風呂へ向かうセフィロスを上機嫌で見送り立ち上がった。
「ありゃ、何か落としちゃった。…って」
ポケットにでも突っ込んであったのだろう。
ポトリと足下に落ちた小さな包みは、およそ彼のイメージにはそぐわない、シックながらも淡くかわいらしい色合いの物で。
また、どう考えても自分のためとは思えない代物。
「ほんっと、素直じゃないんだから」
からかう口調では覆い隠せないほど嬉しそうな自分自身の声音に些か照れたように肩を竦めると、拾い上げた包みをそっとポケットの中に戻し。
「クリスマスっぽい物、何かあったかなー?」
目に見えてそこにあるプレゼントと、何よりも。
目に見えずとも確かに訪れた、予定とは違うこれからの過ごし方に、様子に見合った軽やかな足取りでキッチンへと姿を消すのだった。
〜 Happy Merry Christmas! 〜
2008.12.24