例えばそれは、朝起きてすぐだったり帰宅した直後だったり。
「…セフィロス?」
例えばそれは、家の中だったり外だったり。
「ねえ」
例えばそれは、くつろいでいるときだったり忙しくしているときだったり、と。
根底にある原動力が等しく同じであろう過去の例は、発生の時間・場所・状況において、豊富且つまとまりなく散らばった傾向を見せる。
そして。
今もちょうどそんなタイミングだったらしい。
「どうしたの?」
食事を終え、片付けのためにシンクに向かっていたは、突然後ろから強い力で引き寄せられ作業の中断を余儀なくされてしまう。
唐突な行動の理由を求めようにも、がっちりと回された腕に泡だらけの自分の手を重ねて注意を引くわけにも行かず。
振り向いて表情を確認しようにも、覆いかぶさるように抱きすくめられていては身動きすら思うようにとれず。
「ねえってば」
「」
流れ落ちる水もそのままに繰り返したの問いかけは、ようやく短い発声と、更に強められた拘束力を導き出し。
「うん?」
「…いいから少し、黙っていろ」
「うん」
次いで低く呟かれた言葉には、間を置くことなく肯定の意が返る。
衝動か、情動か。
本能か、感情か。
時折、セフィロスを突き動かす行動の元にあるものが一体何であるのか。
およそ本人以外には計り知れないが。
強弱入り混じる水がステンレスを叩く音をBGMに、はそっと目を閉じた。
2006.10.16