「、今どこにいる?」
音を消された携帯電話が振動を繰り返して着信を告げ、繋がった先には何故か焦りを帯びたセフィロスの声。
「今?今は…」
徒歩では到底行き着けないぐらいに、ミッドガルから外れた山道の途中。
夜道を頼りなげに照らすライトの下、仰ぎ見る姿勢のまま微動だにしないの姿が浮かび上がる。
「早かったね」
どうしたの?との問いかけにこの上もなく渋い顔を披露したセフィロスは。
「ミミズがのたくったような字でしかも夜に『ミッドガルの外に行って来る』とだけ書置きされたら何事が起きたかと驚かんか?」
「あー…ゴメンナサイ」
「…ったく…」
次いで得られた素直な謝罪の言葉に毒気を抜かれたように頭を掻き毟った。
「何をしてるのかと思えば…」
肌寒さを感じさせる冷たい風が通り過ぎるたびに。
赤や黄に色づいた木の葉がはらはらと舞い踊り、頭に肩に場所を厭うことなく降り注ぎ落ちていく。
セフィロスの目には、何の変哲もない落葉樹がただあるがままに立ち並んでいるとしか映らないらしく。
これといって感慨を覚えた様子もなく漫然と見上げている。
「昼間見たばかりだろう」
「昼は見たけど夜はまだでしょ」
「だから見に来たのか?」
「そう」
「…酔狂だな」
「風情がある、と言ってほしいなあ」
呆れた口調にそれとなく反応を返していたは、セフィロスの髪についた葉をそっと散らした。
「昼と夜じゃ全然違うから」
「ああ?」
「表情が、さ」
陽の光の下では様々な色と共存し溶け込んでいる木々が、色を失くした中、わずかな光を受け華やいだ姿を主張し始める、といったところか。
「それに。無機質な建造物と消えることのない明かりの中で生活してると、こういう場所が恋しくなるのよね」
「その場所に俺がいなくてもいいわけだな」
「なに?一人で出てきたこと、拗ねてるの?」
打ってもいない舌打ちが聞こえてきそうなセフィロスの声色に、慈しむような視線で木々を眺め続けていたが淡く微笑みをもらした。
「でも。あなたは今、ここにいてくれているじゃない」
「ふん」
寒さをしのぐように甘えるように。
引き寄せられるままセフィロスの両腕に納まったは、再び視線を上へと戻して。
「これからもずっと一緒に見られるといいね」
「見られるだろ」
「…そうだね。そう、だよね…」
素っ気無くも肯定の意を含んだ言葉に、ささやかで穏やかな先行きを願うと静かに目を閉じた。
2005.11.20