「出たわね」
テスト終了まで30分弱。
最後のゲートをくぐった一堂の前に立ち並ぶのはルーファウス以下、タークスとセフィロス。
そして何故か加わっているガハハとキャハハでプラス2名。
「最後のゲームは…」
「説明は結構。あなたたちが『障害物』って言いたいんでしょ?」
「…その通り」
言葉を遮られて不満げな面持ちのルーファウス。
が、ズタボロになりながらもなにやら黒いものを背負って立つたちを前にして、それを口に出して言うことははばかられたらしい。
「セフィロスだろうがタークスだろうがダークネイションだろうが飛び道具だろうがロボットだろうが!」
よどみなく言い切ったの目がぎらりと底光りする。
「全部ぶちのめして、このテストを終わらせますからね!」
が全てを言い終わるや否や、5体の召喚獣が一気に具現化する。
「待て、。まだ始めるとは…!」
「問答無用。大体その面子にあたしたちが正攻法で勝てるわけ、ないじゃない」
言葉どおり。
リヴァイアサンが津波を起こし、タイタンが地面を隆起させ、バハムートが炎を撒き散らす。
雷鳴がとどろき、グングニルの槍が発動したところでハイデッガーとスカーレットがロボットの爆風に乗って速やかに退場。
もちろん、ガハハとキャハハのフェードアウトするBGM付き。
「さすがに、セフィロスたちには子供だましは通用しないみたいだな」
たーまやー、と口走り退場した2名を見送っていたザックスが、マテリアを光らせながら感心したようにつぶやく。
「前線に立って一回目の召喚を担当してもらった人たちがやられ始めてるみたいね」
「次、行く?」
「お願い」
先ほどのザックス待ちの時点で練られた作戦。
それは、1stクラスのソルジャーで前方を固めそれぞれにが所有する召喚マテリアを装備させ、いつでも発動できる状態で待機させるというもの。
まずは機先を制して相手の動揺を誘い、可能であれば戦力を削ぐ。
現時点では、そこまでが成功したことになるのだが。
「、次は何をするつもりだ?」
業を煮やしたセフィロスが目の前まで詰め寄り、にやりと笑う。
さすがに驚いたが身を引きかけたとき、後ろから前へ一陣の風が通り過ぎる。
「えらい、クラウド!男前〜!」
クラウドがマテリアを持っているとは予測していなかったらしく。
召喚されたチョコボがクリーンヒットし、蹴られ踏まれたセフィロスが片膝をついたままの姿勢で何故か固まっている。
「あれ、もしかして…」
「珍しくストップもかかっちゃったみたいね、いい感じに」
このチャンスをが逃すはずもなく。
あちらこちらでタークスたちを相手に奮闘しているソルジャーをいったん引かせて合図を送った。
数秒後、相手全員に降り注ぐ無属性攻撃。
ここでタークスとダークネイションが残念ながらリタイアしたようだ。
残るは未だストップがかかったままのセフィロスと高みの見物をしていたルーファウスのみ。
「ごめんねー、セフィロス。あたしたちの明るい未来のために、ちょっとだけ我慢してね」
テストが始まってからこっち、初めてにっこりと微笑むは相手の意向を汲むことなくナイツオブラウンドを発動させ。
引きつった表情のまま腕組みしてゴールに立つルーファウスを取り囲んだ。
「さあ、どうするの?続ける?それとも終わる?」
「その必要はない」
マスターレベルまで育てこんであるらしいマテリアをちらつかせるを、組んでいた手をほどいて制する。
「身体能力テストはこれで終了だ」
「そう、それは良かったわ」
終了宣言を受け、心からほっとしたようにあちらこちらで座り込んだり肩を叩き合ったりして喜んでいるようだ。
「で、このテストでなにか得るところはあったわけ?」
「ああ。お前の勝つためには手段を選ばない策略が身にしみた」
「やっぱり主旨、変わってるじゃないの!」
「いや、策略次第ではどのような者でもきちんと実践で使えることが判明した」
「ああそう…」
怒りを通り越して呆れ帰ったが、やる気なさそうにつっこみを入れて。
怒涛のような展開に、忘れ気味だったため息を復活させた。
「とにかく。あたしたち全員、公認された形で休日をいただきますからね!」
「全員?」
「文句ある?」
「いや…」
希望通り休日を勝ち取ったがみんなを引き連れて第三演習場から姿を消した後、各演習場を見回ってきたリーブから受けた報告は。
「どちらにせよ、この現状ではソルジャーたちが出てきても使い物にならんでしょうな…」
「…だろうな」
魔法や召喚獣。
ありとあらゆる手で破壊しつくされた演習場は原形を留めているほうが不思議なぐらいの惨状で、ルーファウスは渋面のまま修理要請の連絡を入れる。
「やっぱり荒れたな、と」
少しだけ体力が回復して他人事のようにつぶやくレノに、つっこむ気力と心意気を持つ人物はいなかったようで。
ルーファウスの暇つぶし兼思いつきで開催された【第一回】秋季・抜き打ち身体能力テストは、予想以上のしっぺ返しを食らって幕を閉じることとなった。
2005.09.29