いたちごっこ



「ソレ、やめてよ」


神羅ビル内、リフレッシュルームに響く不機嫌さを隠そうともしないの声。
言葉を向けられた当人は機嫌を損ねることもなく、至って平然と構えているようだが。


「何の話だ」
「アナタの笑い方のオハナシ」
「俺の?」


そう、と深く頷くに、セフィロスはようやく怪訝な表情を浮かべる。


「その『クックックッ』っての、どっかのムカつくオッサンを彷彿とするからやめて欲しいのよね」
「わけがわからんな」


セフィロスは軽く肩をすくめると、そばにあった新聞に手を伸ばす。
が、バンッという音と共にの手が一足先にセフィロスの行動を遮り、しばしの沈黙。
お互いに見つめ合って…。


「今、実は痛かっただろう」
「そうなのよ。ちょっと今、手がジンジンしてて…じゃない!」


思わず正直に答えてしまったに、セフィロスは渦中となっている笑みを漏らした。


「いいから!精神衛生上よろしくないのよ、ソレ」
「わがままな女だ。ならば『クァックァックァッ』ならいいのか?」
「それじゃますますデコっぱちなマッドサイエンティストとかぶるっつの!」


大きくため息をついて一呼吸ついたの耳に、ドップラー効果のように沸き起こる声。
左、セフィロス越しに真ん中、右。
その間、何が楽しいのか「クァックァックァッ」と笑い続け立ち去る白衣の男。


「…失礼だな、お前」
「そう思うなら無難な笑い方、模索してよ」


頼むからと力なく答えるに、セフィロスはとりあえず考える素振りを見せる。


「ふむ。じゃあ…あはははは」
「無表情で平坦に言い切るの、やめてくれる?」


言下に否定。


「ひっひっひっ」
「どこの変態よ?」


心底嫌そうに、顔をしかめる


「うへへへ」
「魔晄中毒がどうとかって体質でもないでしょうに」


脱力しつつも呆れ顔。


「くすくすくす…」
「あからさまにキャラ違うでしょうが」


学習したのか。
先ほどよりは威力が落ちてはいるが、テーブル叩き再発。


「フォフォフォ」
「バルタン星人か、アンタは!」


と、先ほどの学習能力はどこへやら。
両手をついて立ち上がり、力いっぱいつっこむとは対照的にセフィロスは涼しい表情のままにやりと笑う。


「よく知ってたな、
「今あたしに何かが降りてきた感あり」
「ふむ。イタコか」
「納得すんな」


かみ合わない会話に疲れたのか。
がストンと腰を下ろして、本日何度目かのため息をついた。


「ねえ、セフィロス」
「今度は何だ」


今度こそ新聞を広げて視線を落とし始めたセフィロスからはなおざりな返事。


「真面目にやる気、ある?」
「あるように見えるか?」
「…見えないわね」
「視力は正常なようだな」
「大きなお世話よ」


が、不満げに小さくつぶやいて。


「どうしようもないみたいね」
「ああ」
「もういいわ、分かった。諦める」
「そうか。それはよかった」
「うん、じゃ!」
「待て」


言い終わらないうちに踵を返すの腕を、慌ててつかんで引き止めるセフィロス。


「なによ?」
「………何だ、その行動の意味は」
「なにって」


片腕をつかまれたまま、あからさまに作り物と見て取れる表情のままはにこりと微笑む。


「セフィロスに頼まなくても元を断てばいいわけよ」
「…つまり?」
「その笑い方が改善されるまでしばしお別れアデューバイバイまた会う日まで」
「なるほどそういうことか。じゃあな、


言葉どおり、ご丁寧にひらひらと手を振るの腕からセフィロスの手が離れるかと思われた瞬間。


「なんて、素直に引き下がるか!」
「じゃあ笑い方、改善する?」
「だからフォ…」
「だからなんでそうなるのよ!!」


このいたちごっこ。
どちらの勝ち?