いい男



ルース魔石鉱の入り口付近で、パンネロの姿は確認することが出来た。

が、しかし。
その身柄がヴァンたちの元に戻ることはなく、帝国の皇子の…ラーサーの元へと預けられることとなった状況下。


「彼、あの年にして既にいい男ね」


女の子は大切にするとのフランの弁に、とりあえずの溜飲を下げることが出来たらしいヴァンが、の呟きに興味を示す。


「何でそんなこと分かんだよ」
「そりゃあ…、勘?」


そもそも感じ取れないのなら、教えたところで理解しづらいだろうし、と。
さらなる呟きは苦笑いで隠して曖昧な答えを返すに、ヴァンはやはり納得いかないように首を傾げる。


「そんなもんなのか?じゃあ、オレは?」
「あんたも素養はあるような気がしないでもないけどねえ」


パンネロのための行動力は目を見張るところがある。
しかし、随所に光る天然振りがその良さを片っ端から打ち消している感も否めない訳で。


「どっちなんだよ…。じゃあ、バルフレアは?」


またしても微妙な回答にさらに首を傾げたヴァンが、視線の流れのままに次のターゲットを定める。


「あの人はいい男なんだろうなとは思うけど。個人的にはどっちかっていうといい兄貴分って感じ」
「あ、それなら分かる気がする。んじゃあ、次はバッシュ」


伊達男を標榜し、その傾向にあることは事実。
とは言え、打算を前面に押し出しつつも、なんだかんだと面倒見の良さを垣間見せる瞬間があるせいかもしれない。

ようやくここで納得したように頷いたヴァンが、ごく自然に次の人物へと視線を固定した。


「バッシュは…て。あんた、わたしにそれを聞いてどうするのよ」
「何で。別にいいだろ」


問われ、流れのままに答えかけたが、はたと我に返ると慌てたように口をつぐむ。

ごく自然に言いかけていた答えは、果たしてどういう色合いのものであっただろうか。
少し前までは確かに抱いていたネガティブ一辺倒なものだろうか。
それとも。


「いや…。やっぱあんた、いい男にはまだまだほど遠いわ」
「ちぇ、何だよそれ」
「いいの。ほら、バルフレアがなんか呼んでるよ」


他愛ない会話の上とは言え、簡単にまとめかけていた印象は決して悪いものではなく。
頃合いもよく、ヴァンを呼ぶバルフレアをダシに会話相手を向こうへと追いやったは、複雑な表情を浮かべたまま少し離れた場所に佇む同行者を眺めるのだった。