ラモンが先頭を走り、その後をヴァンたちが追いかける。
そのヴァンたちを一歩遅れて追いかけてくるバッガモナンの一味から逃れるために、余計なアクションは控え、ただひたすらに逃げることに専念しているようだ。
「うわっ!」
モンスターたちが人の気配を察して沸いて出る前に、するすると鉱道を走り抜けていくラモンはうまく難を逃れているが、後を追う形になっている面々には容赦なく魔物たちが攻撃を加えてくる。
「怪我はないか?」
動きの鈍いものは無視し、襲いかかってくるものは走りながらなぎ払い、を繰り返しているところで、に襲いかかってきた魔物を切り伏せたバッシュが短く問いかける。
「な、ないよ。ありがとう」
「気にするな、きみはひたすら走れ」
自然としんがりを努める立ち位置で剣を振いつつ走るバッシュに勧められるままはこくりと頷く。
「分かった」
自分がもたついていては周囲の迷惑になるだけだ、とばかりにそれまで以上に走ることに専念し始めただったが、それでも大変であることには変わりないようで。
「姉、ちゃんと走れ!走るだけなら平気だろ!」
「走ってるよ!」
徐々にペースが落ていくことを気にかけていたらしいヴァンが、隣に並んで声を張り上げた。
「もっと早く!」
「無理言うな!」
大声には大声を。
打てば響くような反応は、周囲の注意も引きつけたようで。
「てか、走るのは良くても持久力がついてかないっての!!」
「おいおい、自慢できることかあ?」
「さあ。でも、喋らずに走った方が体力温存できるって認識しているのかしら、あの子たち」
外野の呟きを他所に、もー!と奮起して隣を走るヴァンと競うように再びペースを上げたの後ろ姿は、不思議とみるみるうちに小さくなっていく。
「いや。どうやらああやってバカ言ってる方が、案外、気が紛れてるみたいだぜ」
「…不合理ね」
面白がる声に呆れた声。
空賊二人が顔を見合わせ、結局は笑ってつられたように走るスピードを上げた。
気がつけば追っ手の声が聞こえなくなって久しいヴァンたちが逃亡劇を終え、魔石鉱の外へと出られるまであと少し。
2017.1.15