リンゴ狩りへ行こう!



「ねえ、いっつも根詰めてたんじゃ大変じゃない?」


からの提案におおむね否定的でない反応を返したアーク一行は、今しがた立て続けに行っていた調査を終えたばかりで。


「そうか?」
「そうだよ。合間合間に息抜きは必要!」


周囲から得られる好感触に発案者の言葉にも自然と熱がこもる。


「だからさ。リンゴ狩りにでも行こうよ」


休息と言いつつも、食料調達の感覚がいまいち抜けきれないのは故意か偶然か。
もっともそこは、特に疑問を差し挟むところでもなかったらしく。
一行は既に場所のリサーチへと話を進めていた。


「リンゴ狩りって言やあ、アレだろ?」
「ああ、グールなんかがよく持ってるよな」
「でもよ。アレはめったに使わねえよな?」
「そう、だな」


アークとトッシュの間で淡々と交わされる会話に。


「へ?」


思わず動きを止めて固まってしまったの反応をどう見て取ったのか、ポコ、イーガ、ゴーゲンが後を引き継いだ。


「じゃあさ、別のリンゴなら使い道あるんじゃない?」
「ふむ。特にお前には入用だろうな」
「そうそう。ゴーゲンだってアークだってあったら便利でしょ?」
「そうじゃのう…あるのとないのとでは気分的に大違いじゃな」
「ほらね、絶対こっちのリンゴのがいいって!」
「では、ロマリアに行くか?」
「メイジバットがよく落とすからの」
「………は?」


どうやら発案者と一行の間に大きな食い違いが生じているらしく。
から漏れた頓狂な声が一連の会話を締めくくる。


「ちょ、ちょっとトッシュ兄。一体なんの話してるの?」
「何って、。おめえが言ったんだろうが。リンゴ狩りに行きてえってよ」
「そりゃ確かに私がそういったんだけど」


一旦、考えるように首をかしげ口をつぐむ同様に、それぞれが顔を見合わせて首をかしげている。


「その話題を突き詰めていって、なんでグールだのメイジバットだのが出てくんの?」
「あいつらがよくリンゴ持ってっからだよ」
「『持って』る?」


木になっているリンゴを狩るからリンゴ狩りというのであって、取ったりもらったりするものではないはず。


「参考までに聞くけど。そのリンゴの種類、教えてもらえる?」


言葉が意味する方向性に眉根をひそめたは、次いで腑に落ちたように問いかける。


「おう。グールが持ってんのがしびれるリンゴで」
「メイジバットが持ってるのが魔法のリンゴじゃな」
「…そうきたか」


わざわざ現物を取り出してまで揚々と返された答えに。
ある程度心の準備ができていたとは言えダメージはなかなかに大きかったらしく、がっくりと肩を落とす者が一名。


「チョンガラ、ロマリアへ頼む」


が、それを了解と取ったのか。
ブリッジで煙草をふかすチョンガラへ、アークからの指示が伝えられた。


「ほいほい」


人使い荒いのお、とぼやきつつも離陸し始めたシルバーノアの行き先はただ一つ。


「ぼく、リンゴ狩り久しぶりなんだ。腕が鳴るね、!」
「…そだね、楽しみだね」


嬉しそうに気合いを込めるポコに対して賛同で返したの表情が、若干引きつっていたというのは言うまでもない話。