大分白んできたとはいえ、まだまだ暗い冬の早朝。
閉ざされた空間の中。
起きる気があるのかないのか、おおよそ判断に苦しむ音量に設定されたアラームが鳴り響いている。
「…目覚まし、鳴ってるよ…」
「……」
なかなか途切れない音に眠りを妨げられたが目を瞑ったまま寝ぼけた声で注意を促す。
が、設定したはずの本人は未だ夢の世界に入り浸っているようで微動だにしない。
「…セフィロス…目覚ましうるさいってば…」
「……」
「セーフィーロースー」
「ん…」
抱き枕状態で後ろから回された手を軽く叩き声をかけても、寝息を乱すことすらできず徒労に終わる。
間近に感じ取れる鼓動と脈動に、つられてうとうとしかけるも。
ピピッ、ピピッ、ピピッ。
「…もー…」
響き渡る音は、やはりどうあってもを眠らせてはくれなかったようだ。
もぞもぞと寝転がったままの姿勢で振り返るとセフィロスの枕元に置かれた携帯に手を伸ばし。
「起きなさいってば」
睡眠を妨害していた元は断ったものの、今度は自分が目覚ましの代わりを務めなければならない状況に憮然とした面持ちでぺちぺちと頬を叩く。
「……?」
幾度かの呼びかけを経て、ようやく薄っすらとまぶたが持ち上げられぼんやりとした瞳がを捉えた。
「アラーム、鳴ってたよ」
「…ああ」
「用事があるからってわざわざかけたんだからさ」
「…ああ」
「さくっと用事、済ませてくれば?」
「…ああ」
「んじゃ、いってらっしゃい」
強引に会話を成立させ手だけを出してひらひらと振ってみせると、そそくさと上掛けを引き寄せる。
これでまた眠れる。
そんな心の声が全身からにじみ出ている…否、溢れ出ている一連の行動に。
「?」
部屋を出る音も、ましてやフローリングを歩くかすかな音さえもないことを不審に思ったが再度振り返りかけたとき、背後から拘束を受け思わず絶句した。
「…セフィロス」
「なんだ」
「用事は?」
「今度でいい」
「ああそう」
更に強められた腕の力に、もはや一人起き出す気などなくなっていることを悟り、は大きくため息をついた。
じわりじわりと伝わっては浸透していく温もり。
刻まれ始めた寝息を耳に、温かい寝具とセフィロスに包まれたがさほど間をおかずして深い眠りへと誘われていったのは。
至極当然の成り行き。
2005.12.07