「あ、あった」
プツ。
「お、ここにも発見」
ブツ。
「意外にも結構あるわね」
プツプツ、ブツ。
「…」
「なーに?」
「何をしている」
「ん。暇つぶし」
何を血迷ったか。
長く連なった行列の中にとセフィロスが、さも手持ち無沙汰そうに並ぶ。
「ここに来たいと言ったのはお前だろう」
「そうなんだけどさ」
巷でおいしいと評判の店で。
一度でいいから食べてみたいとねだるにほだされて、休日を利用して出てきたものの予想以上の人だかり。
加えて客の回転が余りよくないらしく列はなかなか進む気配を見せず滞ったままだ。
「正直、コレほどまでとは思いも寄らなくって」
「それと俺の現状とどういう繋がりがある?」
ひたすら銀髪とにらめっこし続けるは、嫌そうなセフィロスの声にも動じることなくその手を休めようともしない。
「や、だからさ。暇つぶしの準備、なにもしてこなかったから」
「俺がそれに付き合わされる必要性がどこにある」
寄り添うような至近距離で二人を繋ぐのは銀の髪。
すその方をしっかりと握り締めたは、先が分かれたものを見つけるや否や。
「いいじゃないちょっとぐらい」
「ちょっとと言いつついつまで抜き続ける気だ、お前は」
プチプチと軽妙な音を立てて勢いよく抜き取っていく。
「そんなこと言われてもさ。枝毛が目に付いちゃったんだもん」
そう。
かろうじて10分ほどはおとなしく待っていたが時間の経過と共に始めた手遊びは、セフィロスがいてこそ成立するものだった。
「だからと言って片っ端から抜くことはないだろうが」
「ハサミがないんだから仕方ないでしょ?」
無理に途中で引きちぎったら益々傷むし、とまるで悪びれた様子も見受けられず。
「じゃあ、今やるなよ」
「そしたらあたし、退屈になっちゃう」
「知るか」
手に持っていた房を取り上げられては別の房を取り、点検再開。
「退屈なら他のところへ行くか?」
「えー、折角ここまで並んだんだから今さら抜けるのはイヤ」
「じゃあ手遊びやめろ」
「ソレもヤダ」
理不尽な要求をしているの方に何故か分がありそうな小競り合いは絶えることなく続けられ。
周囲から漏れた笑い声を耳ざとく聞きつけたはにんまりと口の端を吊り上げた。
「いいの?セフィロス」
「…何がだ」
「あんまりダメダメ言ってるとあることないこと、大声で言いふらしちゃったりして」
思わせぶりな視線をたどって、セフィロスは初めて注目されていたことに気づく。
「『英雄』に変な風評立つと色々まずいんじゃないかなーとか思うんだけど」
「………。後で覚えてろよ…」
「なんのことかしら。さっぱりわけが分からないわ」
一時的にとはいえ、抵抗を封じることに成功したは実に満足げな表情を浮かべ嬉々として作業を継続する。
この間、一体どれほどの髪が犠牲となったのか。
既に諦めの境地でなされるがままのセフィロスには知る由もない。
2005.11.09