「セフィロス、お待たせー…って」
朝食後の後片付けをざっと済ませたが、足取りも軽やかにリビングを覗き込むと。
ソファに長々と寝そべって微動だにしないセフィロスの姿。
「あらま」
そのまま目線を滑らせて時計を確認。
「まだ10分しか経ってないじゃない」
朝食時に決めた予定では、特に目的も定めず足の向くままにのんびりおでかけという話だったはず。
「こりゃ、流れちゃったかな」
起こせば起きないことはないが。
起きたときにはもう既に気分が変わってしまっている確率が高い。
は軽く肩をすくめると、読みかけの本を手に空いたソファへと身体を沈めた。
かすかな寝息とページをめくる音のみが響いていた室内に異音が混じる。
本に目を落としたままのをしばらく眺めていたセフィロスがつぶやくように問いかけて。
「…俺はどのくらい寝てた?」
「2時間ぐらいじゃない?」
「そうか」
「うん」
「……」
「……」
心ここにあらず、な雰囲気を全身にまとったはかろうじて返事をしているといった様子。
「」
「なーに?」
「メシんときどっか行くって言ってなかったか?」
「言ってたね」
「……」
「……」
沈黙に耐えかねて再度話しかけたセフィロスに返されるのは、やはりなおざりなもので。
傍に寄ろうがため息をつこうがこれといった反応を返さない。
「」
「はーい」
「暇だ」
「そう?」
「……」
「……」
直接的表現に変えても現状は変わらず。
「」
「なんですか」
間をおかずに名を呼ぶと、若干イラついた声が返る。
「後もうちょっとで読み終わるから。それまでおとなしく待っててくれない?」
「…具体的には?」
「30分」
「……」
「……」
言われたとおりにおとなしくなったセフィロスに、満足そうに背中を向けたは。
次の瞬間ずっしりと重みを感じて振り返る。
「…何のマネ?」
「暇だ、と言っている」
「だから?」
「本読んでないで俺を構え」
後ろから抱きかかえるようにして張り付いているセフィロスに。
「なんでそう偉そうかな、この人は」
呆れた口調ながらも、あきらめたように微笑んだは本を手放す。
結局のところ。
この日の予定がどうなるかは、セフィロスの気分次第といったところか。
2005.10.17