ソルジャー帰還の報せを受け。
十数日ぶりの再会を果たすべく駆けつけたの視界に飛び込んできたセフィロスの姿は。
「おかえりなさい…って」
お世辞にも無事とは言いがたいものだった。
「なにその格好」
長テーブルに備え付けられたパイプ椅子を3つほど占領してぞんざいに投げ出された左足には、あからさまにギプスをはめていると見て取れる硬質さと、これでもかと言うほどぐるぐる巻きにされた真っ白な包帯。
「あなたに自虐の気があったなんて驚きだわ」
見慣れぬ姿にまずは息を呑み。
驚いた様子でセフィロスを眺めていたも、やがて理解に苦しむといった表情を浮かべる。
「ずいぶんな言い草だな」
「あら、だって」
かけようとした魔法は負傷しているはずの本人に遮られ。
「回復魔法の一つでもかければ即、完治するようなものをわざわざそのままにしてあるから。なにか新しい試みかヤバイ趣味にでも目覚めたのかと思って」
憮然とした口から流れ出た言葉にはトゲが大量に付着していたのだが。
何が楽しいのか。
セフィロスは一向に気にした様子もなく肩を揺らせて笑い続ける。
対応に窮したがふと違和感に気づいて、身体を右に左にと乗り出してはきょろきょろと辺りを見回した。
「セフィロス、松葉杖はどうしたの?魔法で治す気がないのなら松葉杖がいるでしょ?」
「ああ、いるな」
「いるなって…あのねえ。救護室からもらってくるからちょっとそこで待ってて」
「いや、必要ない」
「必要ないわけないでしょ」
「」
相手していられないとばかりに身を翻しかけたを。
「俺の松葉杖ならここにいる」
引きとめ、寄りかかるようにして立ち上がる。
あっさりと逆転する視点。
おとなしく見守っていたが、近い位置にあるセフィロスの顔を見上げそっと眉根をひそめた。
「もしもしセフィロスさん?」
「なんだ」
「………つまりこれは?」
がっしりと肩に手を回されて、支えているのだか抱え込まれているのだか分からない状態のまま。
「当分の間、お前が松葉杖の代わりをすればいいだろう?」
「…あっきれた」
前触れもなく歩き始めたセフィロスにつられても歩き出す。
「傍にいてくれって、どうして素直に言えないのかしらね?」
「聞きたいのか?」
「あーら、言ってくれるの?」
「……」
「……」
探り合うようなしばしの沈黙。
まんざらでもないように少しだけ期待の色を覗かせたが次の言葉を待つ。
「さすがに疲れたな」
「………うわー…」
「今日ぐらいはゆっくり休みたいものだ」
「そこまで振っといて逃げるかなー」
「…何をブツブツ言っている」
気づかなかったでは済まされない間の悪さで逃げを打ったセフィロスに、姑息だの卑怯だのとふてくされたが専属松葉杖を終わらせるべく。
彼女にしか分からない隙を突いて強引に治療を済ませてしまうまで、後わずか。
2005.11.13